23 小特集 インターネットとゲームへの依存 使用が長期的に脳の報酬系の構造 に影響することが示されている。 加えてインターネットやゲームの 使用は,言語等多様な認知機能を 支える広範な脳の構造に悪影響を 及ぼしていた。 インターネット使用頻度の子ど もの脳構造(灰白質/白質量)へ の長期影響を報告したTakeuchi et al.(2018)では,1時点目のイ ンターネットの使用頻度の高さが 3年後の脳の灰白質量減少に影響 することを示した。有意な影響が みられたのはシルビウス溝近傍, 両側側頭頂・小脳,線条体を含む 大脳基底核領域,島,眼窩前頭皮 質,背外側前頭皮質,左舌状回等 であり,詳述はしないが白質量に おいても広範囲でインターネット 使用頻度の高さが容量低下に影響 していた。インターネットの使用 頻度の高さは言語性の知能指数に も負の影響を及ぼしており,上述 の領域は言語性知能指数の減少と 関係のある領域と大部分で重なり 合っていた。 ゲームとの関係では,ゲームを する時間が増加することで横断的 にも縦断的にも線条体付近や言語 関連領域(左弓状束など)等で白 質内の組織がまばらになる(水 分子の拡散性が上昇する)こと が示されている(図1;Takeuchi et al., 2016)。依存様の状態では 存に関する背景として想定される のは,報酬系と呼ばれるドーパミ ン作動性の領域,すなわち腹側被 蓋野や黒質から視床,線条体,眼 窩前頭皮質領域に向かって広が る,快の生起とその学習,そして 行動の調整を担う領域の異常であ る。例えばYao et al.(2017)は IGD者の脳の構造/機能画像研究 についてメタ分析を行い,その双 方の結果から,線条体,背外側前 頭前野そして前帯状皮質に機能 面・構造面で統制群との差がみら れると報告している(機能面では 活動亢進,構造面では灰白質量減 少)。線条体については先述の通 り報酬に関わり反応する領域であ る。前帯状皮質と背外側前頭皮質 は行動の抑制に関わる領域であ る。この領域の差異は,行動の制 御に関する代償的活動を反映した ものと推測されている。 子どもの脳発達とインター ネット・ゲームとの関係 我々のグループでは小児の生活 習慣や脳画像データの縦断研究を 行っており,ゲームやインター ネットの頻度や時間といった指標 と小児の脳構造の発達的変化との 関連を報告してきた。頻度や時間 であるため,直接的に依存様の状 態と脳構造との関連を検討してい るわけではない。それにもかかわ らず,インターネットやゲームの スマートフォンやタブレット といった多機能端末が普及した ことで,ゲームを楽しむ,ソー シャル・ネットワーキング・サー ビスで他者と交流するといった多 様なサービスにアクセスすること が容易になっている。しかし,イ ンターネットやゲームに対して依 存的な症状を呈する者も存在す る。近年ではDSM–5「今後の研 究のための病態」にインターネッ トゲーム障害(Internet gaming disorder以下IGD;A. P. A., 2013) が,そしてICD–11にはゲーム障 害(WHO, 2018) が 記 載 さ れ 研 究が進んでいる領域である。 インターネットやゲームへの 依存と脳 依存のキーとなる要素は「統制 の喪失」,つまり悪い結果に至る ことを理解していても使用を制 御することが困難である,とい う状態である(Brand, Young, & Laier, 2014)。こうした問題とな る使い方をすることと,使用時間 が長くなることは重なり合うもの の区別する方がよい。例えば,e スポーツの選手は多くの時間を競 技たるゲームに費やすが,彼/彼 女らが日常生活に支障を来してい るとは限らない(詳述はしない が,IGD者とプロゲーマーの比較 研究はすでに報告がある)。 インターネットやゲームへの依
ネットとゲームへの依存が脳に及ぼす影響
東北大学加齢医学研究所 助教松﨑 泰
(まつざき ゆたか) Profile─ 東北大学大学院教育学研究科修 了。博士(教育学)。2017年より現 職。専門は発達障害学・発達心理 学。著書は『最新脳科学でついに 出た結論「本の読み方」で学力は 決まる』(共著,青春出版社)など。 東北大学加齢医学研究所 教授 所長川島隆太
(かわしま りゅうた) Profile─ 東北大学大学院医学系研究科修 了。医師。医学博士。カロリンス カ研究所客員研究員,東北大学助 手,講師を経て現職。専門は脳イ メージング。著書は『スマホが学 力を破壊する』(集英社)など。24 なく,使用頻度や時間といった指 標であっても,インターネットや ゲームにふれる時間が増えるほど 報酬や認知機能に関わる広範な領 域の脳構造に悪影響を与えるとい える。 上記のインターネットやゲーム 習慣が脳構造に与える影響につい ては先述のIGD者で統制群と差 異がみられた領域の脳領域と重な ることがわかる。認知機能低下へ の影響に関しては,インターネッ トやゲームに費やす時間が増える ことで,他の習慣に用いる時間が 圧迫されることが関与している可 能性がある。例えばスマートフォ ンの使用が様々な活動によく作用 する睡眠のための時間に置き換 わることは広く示されているが (e.g. Lemola et al., 2015),そうし た影響により日々の学習や生活の 質が低下することで,認知機能や 脳構造に間接的に影響が生じてい た可能性がある。 おわりに 非常に難しいのがスマートフォ ン等の多機能端末そのものに悪が あるとは言い切れないことであ る。スマートフォンを利用した健 康増進のための取り組みは相当数 なされ,一定の効果が報告されて いるようである(e.g. Firth et al., 2017)。多機能端末は使い方次第 である,といってしまえばそれま でであるが,インターネットや ゲームを無計画に楽しむことが, 脳や認知機能によく作用しないこ とは明確である。 文 献 A. P. A. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition. Arlington: American Psychiatric Publishing. Brand, M., Young, K. S., & Laier,
C. (2014). Prefrontal control
a n d I n t e r n e t a d d i c t i o n : A theoretical model and review o f n e u r o p s y c h o l o g i c a l a n d neuroimaging findings. Frontiers in Human Neuroscience, 8, 1–13. Firth, J., Torous, J., Nicholas, J.,
Carney, R., Rosenbaum, S., & Sarris, J. (2017). Can smartphone mental health interventions reduce symptoms of anxiety? A meta–analysis of randomized controlled trials. Journal of Affective Disorders, 218, 15–22. WHO (2018). ICD–11 for Mortality
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Lemola, S., Perkinson–Goor, N., Brand, S., Dewald–Kaufmann, J. F., & Grob, A. (2015). Adolescents’ electoronic media use at night, sleep disturbance, and depressive symptoms, in the smartphone a g e . J o u r n a l o f Y o u t h a n d Adolescence. 44(2), 405–418. Takeuchi, H., Taki, Y., Hashizume,
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Takeuchi, H., Taki, Y., Asano, K., Asano, M., Sassa, Y., Yokota, S., Kotozaki, Y., Nouchi, R., & Kawashima, R. (2018). Impact of frequency of internet use o n d e v e l o p m e n t o f b r a i n structures and verbal intelligence: Longitudinal analyses. Human Brain Mapping, 39(11), 4471–4479. Yao, Y. W., Liu, L., Ma, S. S., Shi,
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